2025-09 月記

旅行
9月の第1週に友人たちと旅行に行きました。楽しかったです。
https://note.com/hari64boli64/n/nfbae8eba58c9
個人的にお気に入りの写真を何枚か以下に抜粋します。




学問
円詰め込み
この論文を最近読んで、面白いなと思いました。
"A Simple Proof of Thue’s Theorem on Circle Packing"
Thue's Theoremとは、六方最密充填構造が、平面上の円詰込みにおける最密解であることを主張する定理です。定理の内容はかなり自明ですが、歴史上の経緯も踏まえると非常に難しい問題です。
saturatedな点集合に対してDelaunay triangulationを構成できるというのが最大の要点だと思います。三角形分割を構成する各点pを、3次元空間に\norm{p}^2の高さまで持ち上げ、それの凸包を作ります。すると、それが三角形の面しか持たないので、再度2次元平面上に射影すると、ちゃんと三角形分割になっているという議論がありました。新鮮で面白いです。

sinc関数の循環論法
sinc関数の極限の導出に循環論法があるという話を、結構何回もなんで循環論法になっているんだっけ?と混乱しているのでメモを残します。
https://manabitimes.jp/math/669
sinc関数の極限の導出に、扇形の面積公式を使いますが、この面積公式の導出にsinc関数の極限を使うから循環するという話です。
要するに、円の面積の求め方を殆ど誰もちゃんと理解していないという事実が背後にあります。改めて文字に起こすと本当に結構衝撃的です。2013年の阪大理系がよく槍玉に上げられています。
無限という概念の難しさは本当にいつも想定以上です。
円の面積公式S=πr^2の循環論法の解消について
https://www.chart.co.jp/subject/sugaku/suken_tsushin/58/58-3.pdf
ところで、少し別の話題(複素解析の本の校閲)から再びこのことに思いをはせる機会があったのですが、よくよく考えるとπって最も身近な無限の概念な気がします。
πを円と周の率として考えるのではなく、半径1の円に内接するn角形の辺の総和の極限と考えると、諸々の級数にπが登場するのにも、合点がいきます。これは結構面白いです。
格子問題
LWE問題に対する知識がバイトで必要になりました。一生使わないだろうと思っていた知識が数年越しに必要になるのは面白いです。
https://zenn.dev/miki555555na/articles/514324be0ffc94
雑記
学振
DC1に採用されました。Twitterに書こうか少し迷いましたが、こういう報告って落ちた人が見たら気分を害するだろうなみたいなことを考えると、かなり気乗りせず止めました(勿論、考え方には千差万別ありますし、批判の意図はありません)。
嬉しいことではありますが、そもそも採用率が低すぎて、全体のことを考えるとあんまり素直に喜べません。
このサイトをクリックして読んでくださるのは、私と仲のいい友人か、個人的にお世話になった方々が大半でしょうし、ここに記しておきます。特に研究室の方々には本当にお世話になりました。ありがとうございます。
基礎研究
基礎研究の意義や、基礎研究に政府がお金を出す理由についての議論をよく見ます。その過程でHARKingというのが話題になっていました。必ずしも避けられる性質の不正ではないのですが、不正として批判されていると知ることは必要なように思えます。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/HARKing
特に、広義のHARKingはかなり避けるのが難しい気がします。先月の投稿も含めますが、Twitter(発言者は意図的に省略します)では、以下のようなことも言われていました。
(「AI(A)とAI(B)が存在して、AとBを4回対戦させたところ、Aが4勝した。(i) これを踏まえてAの方がBより強いのではないかと考え、AとBを100回対戦させた。その結果、Aは5%有意に勝ちが多かった。(ii)」というTweetに対して)
「AI(A)とAI(B)が存在して、AとBを4回対戦させたところ、Aが4勝した。」という結果を見た後に仮説を立ててしまっているので、多重比較補正をせずに統計的検定を行うのは当然不正に当たります。
「実験結果に合わせて仮説と検証を最初からやり直して」も失敗の公表がなければ同じ
自分はバイオ系でも人文系でもないしそういうのとは縁遠いだろうと油断していると、かなり足元をすくわれそうで怖い話です。
最近も、論文用のFigを作成した際に、友人からグラフの下端を0でなく恣意的な値に設定するのはよろしくないのでは? と言われ、ハッとしました。見やすくしようと思ってy軸の下限を設定したのですが、言われると確かに印象操作の側面もありました。
決して不正を起こさぬよう、絶えず他山の石とし続けなければならないように思えます。
日本語の誤用
文系科目の方の校閲バイトで近頃は忙殺されていたのですが、校正の自動化を試みています。LocalLLMを試したら想像以上にまだ性能が低く、textlintというツールに基づいてコツコツと開発しています。
その作業の過程でこんなサイトを見つけました。ちゃんとした日本を書いて話していたいものです。
https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~gokun/machigai.html
みなとみらい
兄が結婚したので、みなとみらいで写真を撮る為に、スーツを着て参加していました。その過程でDIAMOND PRINCESSを生で見て、これは船ではなく動くマンションだなという感想になりました。
人類ってマンションを海上で高速移動させられるのですね。

アンケート
大学からの帰りに東京駅の八重洲口付近を歩いていたら、男女のお二人に研究のアンケートを答えてくれないかと声を掛けられた。暇だったし、修士学生として「研究」と聞き断る訳にもいかず引き受けたら、今日はほぼ全敗だったらしくやたらとありがたがられた。
内容は「雨の中で傘を持っている人を、棒人間などではなく立体的に描いてほしい」というものだった。お二人は心理学を学んでいる社会人学生で、詳しいことは分からなかったが大学所属ではないらしい。授業の一環だったのかも知れない。
自分は雲から降る雨と、遠景のビル、道路を歩く傘を持った二人を描いた。土砂降りを100%として降水量は何パーかと聞かれ、80%だと答えた。傘はどのくらい雨を凌げているかと聞かれ、2人とも100%だと答えた。
話を聞くと、降水量が多いほどその人のストレスが多く、傘の防水率はその発散度合を大まかに表すらしい。一個人に対しての判別だと単なる占いに過ぎないが、十分なサンプル数があれば有意差が出そうな仮説だと思った。実際、その解説にはまぁまぁ心当たりがあった。
自分が情報系の博士課程に進学する学生でバイトを色々したり院試があったりしたこと、ストレスにやたら弱いらしく最近もまた精神を壊して今は胃薬を飲んでいること、でも近頃は不真面目かつ自堕落に過ごして楽しく過ごしていることを話した。お相手方も属性ゆえか真剣に話を聞いてくれた。
どうやらかなり珍しかったらしく、特に降水量が80%はだいぶ高いと言われた。人を2人描いたのも珍しかったらしい。外れ値で申し訳ないと言ったが面白いデータだと言ってもらえた。なんだか今の私を体現するエピソードだなと思いながらアンケートは終了した。
最後に、自分は実は迷子で、本屋の丸善を目指しているが道を知らないかと尋ねた。方角を教えてもらい、無事に目当ての本も買えた。御礼を言いたかったが、当然連絡先も知らない。面白かったし、あのお二人のエゴサに引っ掛かればいいなと思いここに記す。

以上のような事をTwitterに書いたら思ったより人に読まれました。

このお二人のことが伝わって嬉しいなと思っていましたが、引用を見ていると誤解による抽象的な意味での不利益がお二人に生じていそうで削除しました。流石にそこまでは考えておらず反省です。このお二人は決して勧誘とかの類ではなく、本当に単なる研究のアンケートでした。
このnoteを読む人は限定的で、誤解する人も少ないだろうと思い、ここには書いておきます。
9月の中旬は、沈みまくって本当に全く何も活動できないダメな日もあったり、元気に夜まで活動して翌日に響いたりと、未だに波があったので、もう一回病院に行くか悩むレベルで困っていたのですが、最近はようやく安定的になって来た気もします。というか安定して欲しい。
夏も終わり、秋は訪れ、夜風が心地よい季節です。


